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★今日のプーの一言★
ママの枕をお昼寝ベットにもらったでバウ。
ママの汗と涙とよだれのニオイがするでバウ。
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はじめてプーがうちにやってきた日の夜。
女はプーが気になって眠れなかった。
ペットショップからは、
「今夜は夜鳴きするかもしれませんが、
環境に慣れるまでのことだから、かまわないでいいですよ。
ゲージにいれたままにしておいてください。
今日は、子犬も新しい環境に緊張してると思うので
なるべく静かにしてやってくださいね」
と、注意を受けていた。
なので、ゲージ越しにプーを眺めては
(くくぅーっカワイイぞう。
さわりたいぞ〜なでまわしたいぞ〜)
と、身悶えるしかなかった。
そんな心にモヤモヤを抱えたまま布団に入ったのだから
寝付けるわけがない。
「春とはいえまだ夜は寒いよねぇ〜。
ねえねえ、タオルもう一枚必要かな?
私の着古したフリースのほうがいいかな?
リビングの暖房、つけたほうがいい?でも乾燥しちゃうかな?」
リビングでひとり寝ているプーが気になって仕方のない女は
隣で寝ている男に話しかけてみるものの
「ぐぉぉ」
という、健やかな寝息しかかえってこなかった。
男は枕に頭を乗せたら10秒で眠りにつける体質なのだ。ちえ。
(いまこの瞬間だけはこの男が憎い)と女は思った。
プーがはじめてのお家で不安がってないか、
いっしょに心配したかった女は少し不満で
ついつい寝ている男の鼻をつまんだりして八つ当たりした。
プーもはじめての環境でストレスかもしれないが
女も思うとおりの愛情表現ができないため
軽くストレス状態に陥っているようだった。
それでも、しばらくしてから女にも睡魔が訪れ
うとうと眠りにつこうとしていた、そのとき。
「きゅうん、きゅうん」
という鳴き声が聞こえてきたのである。
(わ!来た!夜鳴きだ!!)
時計を見ると、夜中の3時。
とりあえず、なけなしの忍耐力を使って女は5分、我慢してみた。
だが、きゅいん、きゅいんという切なげな鳴き声は止まない。
もう少し我慢してみよう、と10分我慢した。
…。まだ鳴き止まない。
どうしよう。
ペットショップのお兄さんはほっとけ、っていってたけど。。。
もしかして寒いのかなー?
お水なくなったのかなー?
それとも万が一、具合悪くて鳴いてるのかな…?
だめだ!気になる!!
「ねえねえ、パパちん。プーが鳴いてるのーどうしよう」
我慢できずに男を起こしにかかる女。
「んー、でもほっとけっていってたし〜…」
半分寝ている状態で答える男。すごく迷惑そうである。
「でも、鳴きやまないんだよ、ずーっと鳴いているんだよ?」
「じゃあ様子見てくれば〜ムニャムニャ…」
よし!その言葉を待ってた女はガバと布団から起き上がり
リビングへ突進していった。
「プ〜ちゃん、どうちたのかなー??」
そっと声をかけると、
プーはゲージのなかからしっぽを振って女を嬉しそうに見た。
うん。具合は悪くないみたい。
お水もあるし、寒くもなさそう。やっぱ寂しいだけだったか。
「まだ夜だからねー、イイコでおネンネちようねー…」
そういうと、
なんと女はゲージ越しに子守歌を歌いはじめた。
正気か?女。
それでも多分、歌自体はプーにとって迷惑でも
女の気配に安心はしたのだろう。
きゅいん、きゅいんという鳴き声は止まっていた。
だがしかし
よし、そろそろ布団に戻っても平気かな、と
そーっと寝室に戻ると、途端にまた
「きゅいん、きゅいん」と鳴くのである。
そのたびリビングに戻り、子守歌を歌う女。イタチごっこである。
4、5回も続けるとさすがに女も疲れてきた。
今更ながら眠くもなってきた。
しかしプーはあきらめてはくれそうもない。
女が寝室に戻ろうとするときゅんきゅん鳴き出す。
女がそばにいくと、鳴きやんで嬉しそうに尻尾を振るようになったプーは
女を「ママ」と認識してくれたように思えた。
ああ、こうしてプーとの絆は深まっていくのね。。。
「大丈夫よープーちゃん、ママどこにもいかないからねー…」
結局女はその日、寝室には戻らず
毛布一枚をかぶって
リビングの、プーのゲージ横で丸くなって寝たのであった。
女、初日からしてダメ飼い主ぶりを発揮。
これがダメ飼い主道の幕開けであった。