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★今日のプーの一言★
ママ〜
ぱそこんしてないで早く一緒に寝るでバウ♪
うふ〜ん♪でバウ
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プーを飼い始めて2週間も経った頃。
女のおバカ飼い主道は極まる一方であった。
「プーちゃん、ママでちゅよ〜。
今日もプーちゃんはかわいいでバウねえ〜〜\^o^/」
女はかつて、
“大人が子供に対して赤ちゃん言葉で話しかけるのはよくない!
子供は舌足らずで、言葉をうまく発することができないだけで
音はきちんと聞き取っている。
そんな子供たちに正しい言葉を教える立場の大人がそんなことでどうする”
という持論をふりかざし、
周囲の赤ちゃん言葉を使う知り合いの大人たちに対し苦々しく思っていた。
それがどうだろう?この体たらく。
30も過ぎた女が
赤ちゃん言葉に加えてバウバウとワン語も交えて会話している様は
はっきりいって不気味である。
「だって、プーちゃんは赤ちゃんじゃなくてワンちゃんだもんねえ♪
それに、こんな話し方するの家のなかだけだもん。別にいいじゃんよ」
言い訳する女に、男は冷たく釘をさす。
「いや、気づいてないだけで外でもバウバウいってるから、キミ」
「えー、うっそだー」
「この前、電話でお義母さんと話してたとき、バウ語まじってたよ」
マジすか、ダンナ。
一瞬あせったものの、
でもま、お母さんになら別にいっか、と開き直る女。
ダメ女である。
「この分じゃ会社でもバウバウいってんじゃない?」
んなバカな〜。
…ことをしている可能性は、多いにある。
注意力散漫な女にオン・オフの切り替えは無理なのである。
再びあせりかけてはみたものの
でも、会社といっても話してる相手といったら
どうせ常務くらいだし別にいっか、と
またしても開き直る女であった。(常務すまん)
まったくもってダメダメである。
だがしかし、そんな女にも真剣な悩みがあった。
プーの、ものすごい臆病っぷりについてだ。
ケージの扉をあけて
「プーちゃん、おいで♪」と呼んでもなかなか出てこない。
出ようか、出まいかものすごく躊躇って
扉の前でうろうろしている。
出たくないのか、と思って扉を閉めようとすると
「うきゅぐるるぅ〜…」
と不満の声をもらす。
どうやら出たくないわけではなく
ケージの外が怖くて出られずに、
誰かが手を差し伸べるのを待っているようである。
しょーがないので、ケージのなかに手を伸ばし
耳のあたりをなでて落ち着かせてやると
嬉しそうにスリスリしてくるが
手をはなしてオイデオイデをすると、
キュンキュン鳴いてもっとなでろと催促する。
ワガママで甘ったれさんなのである。
ん?
臆病だけどワガママで甘ったれ?
人間だったらけっこう始末悪いタイプだな。
そういう女。
そういう女は大抵“魔性の女”と呼ばれ
か弱さを武器に男を振りまわしたりする。
なよなよしているくせに妙なところ頑固で
人の忠告なんか聞かずに困った事態ばかり引き起こすのだ。
きゃー、お昼のドラマみたい。おそろしい。
「なるべくなら、ママ、そういう人とは
お近づきになりたくないわー。
プーはオトコを振りまわすなんて、そんなことしないもんねー。
かわいいワンちゃんに生まれてよかったでバウねー♪」
どうやら女は自分自身がプーに振りまわされてることに
気が付いていないようだ。めでたいやっちゃ。
女にとってプーのワガママも甘ったれも
愛情を深める以外、特に問題はなかった。
問題は、並外れたプーの“臆病さ”だけであった。
ようやく、ケージの外に出ても
ケージの前に敷いた畳一畳分のホットカーペットから外は
一歩たりと出ようとはしなかった。
いつでも目の届く範囲にいてくれるのは
手間もかからず助かるのだが
ケージと、畳一畳分のホットカーペットが全世界というのも、
あまりに行動範囲が狭くて不憫である。
もうすぐお散歩デビューを控えるプーにとって
うちの中すら怖くて探検できないのは
かなり問題ではなかろうか?
外は桜が満開の春真っ盛り。
この美しい景色を、プーにも見せたあげたい…。
女の悩みは深まる一方であった。。