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★今日のプーの一言★
ママってあわてんぼなんでバウ。
もうちょっと落ち着いてほしいでバウ。。
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「吐いちゃいましたか。。。
吐いた後の様子はどうですか?震えてませんか?
ネギとかチョコレートとうっかり食べたりしませんでしたか?
…はあ、ポッキー食べた口でチュウですか〜。。
ううーん、心配なら病院にいかれたほうが確かにいいですね…」
そういってペットショップの店員が電話で教えてくれた病院は
ウチから徒歩で20分ほどの場所にあるようだった。
女は迷わず駅からタクシーを拾い、プーをピックアップして
病院に向かった。
プーの様子は、さほど具合が悪そうにも見えなかったが
ぐったりしているようにも見えた。
おでかけ用のかごに入れられ、おどおど不安そうだった。
『プー、もう大丈夫だよ。ママついてるからね。
病院で診てもらおうね。』
運転手の目も気にせず、車のなかでプーに語りかける女。
ちょっとアヤしい人だぞ、それ。
教えられた病院は古くて小さな病院だったが
先生は気さくで優しそうな先生だった。
「今日はどうしました?
食べたもの吐いた?ウンチもゆるい、と。
ふーん、まだ子供ですね、このコ。
飼い始めて3日目ですかー、ふむふむ…」
診察台に乗せられたプーはかなり怯えた様子で
がたがた震えていた。
あんまりひどく震えるので、たまらず女は先生に問いかけた。
「せ、先生、このコ相当具合悪いんでしょうか?
ものすごく震えてます!!」
「はいはい、ちょっと失礼。とりあえずお熱はかりましょうか。
飼い主さん、ワンちゃん押さえててくださいねー」
先生はそういうと慣れた手つきでぷすり、と
プーのお尻に体温計を突き刺した。
ひゃ!ワンちゃんの体温はお尻で計るんだ!
女もビビッたがプーもビビッたらしい。
震えがピタリと止まった。
どうやらびっくりしたあまり硬直したようだ。
「おやおや、ちっとも騒がないでイイ子だねー。
すぐ終わるからねー、じっとしててねー、イイ子だねー」
そのままへたん、と座り込むプーを
しばらく先生は触診したり、聴診器をあてたり
血を採ったりて診察をした。
女はどきどきして、先生の動きを見つめていた。
ああ、プーの具合が
そんなに悪くありませんように!
もしも私のポッキーのせいでプーになにかあったら
もう、一生ポッキーは食べません…!
やがて、心配顔の女を安心させるように、
先生がにっこりして言った。
「お熱はありませんし、特に問題はなさそうですね。
いちおう、血液検査もしますが、お話を聞く限りでは
少しばかり消化不良を起こしたようですね。
環境が変わったばかりのワンちゃんは
けっこう体調くずすことありますから」
「で、でもさっきすごく震えてたのは。。。」
「ここに来てからですから、きっと緊張したんでしょう(笑)。
キミずいぶん臆病さんだねー、もうコワイことしないから
大丈夫だよー」
確かに先生がそういってプーに手を差し伸べると
足腰立たぬほどガタガタ震えてるわりに
尻尾はぶんぶん振って先生の手を舐めて甘えていた。
なんだ。たいしたことないのか。
よ、良かったぁ…。
朝からの緊張感がゆるー、っと溶けていくのがわかった。
こうして大騒ぎしたわりに、
プーの初めてのハラいた騒動はあっけなく解決したのだった。
その翌日。
前日の体調不良もどこ吹く風で
プーは朝からごはんをガツガツ食べた。
ゆるかったウンチももとどおり、
色艶もよいしっかりした固形のものを生み落とした。
「パパーッ、プーがウンチしたあ〜!
見て見てぇ〜。立派だよぅ〜♪♪」
「ホントだあ〜♪プー、良かったねえ。
プーはちっちゃいから、
ウンチもちっちゃくてコロコロしてかわいいねえ♪」
「そうだねえ♪クロマメみたいだねえ♪♪」
朝っぱらから犬のウンチを眺めて、ニタニタする二人。
相変わらず、バカである。
でもまあ、良いではないか。
幸せのかたちは人それぞれだ。
今のふたりの幸せは
クロマメに似たプーのウンチのかたちをしているのだ。
そうしてこの日以来、
プー&サスケ一家ではウンチのことを
【クロマメ】と呼ぶようになったのである。