爺ジ(私の父)は週に3回、人工透析をしています。
透析後は、いつも身体がしんどいそうです。
その爺ジも、可愛い小次郎君の笑顔を思い描きながら、しんどいながらも車を運転して病院から帰路につくのです。
小次郎君は、爺ジの帰宅時間をおおよそ理解していました。
爺ジは透析の時、お昼の2時前後に自宅を出発します。
そして、夜の7時前後に帰宅するのです。
ですから小次郎君、夕方6時半過ぎから爺ジが帰宅するまで、ひたすら爺ジを玄関の板の間で待ち続けるのです。
小次郎君のその姿は、何とも言えないくらい健気で愛らしいものでした。
小次郎君の愛は無償の愛でした。
かわいそうになるくらい健気でした。
どんなに寒い日でも、玄関で待っているのです。
そして、その間は横になることはあっても、1分たりとも1秒たりとも絶対に寝ません。
わざと散歩へ連れ出そうとすると『クゥ〜ン』と、嫌がって鳴き声を上げ、テコでも動かない小次郎君でした。
まるで小次郎君は、『忠犬ハチ公だよね』と、いつも婆バと私は感心しておりました。
爺ジの車の音や匂いが分かるのでしょうか…小次郎君は、爺ジの車が実家の駐車場に着く前から…私共が気付かぬ前から、飛び跳ねて、はしゃぎ回って、一心不乱に自分の嬉しい気持ち・喜びを表現するのです。
そして、大好きな『おもちゃ』をくわえて爺ジをお迎えし、透析と運転で疲れたであろう爺ジの手を、何度も何度も愛おしそうに無償の愛でペロペロなめるのでした。
いつも、爺ジは冗談半分・本気半分で『君たちは小次郎君を少しは見習いたまえ…』と、婆バや私に話すものでした。
こうやって思い出を綴っていく上でも、小次郎君が亡くなったなんて…まだ信じられない思いです。