鬼ババたちの事件簿第一章　事件はこうして始まった | 小梅（東）のMY ROOM - ペットストリート

8月末のこと。

小春の様子が何か変・・・誰もがそう思い出したのがこの頃だった。

ご飯を食べに来るものの、何かに怯えているようで落ち着かない

お皿をあてがっても、いくらも食べずに逃げて行ってしまう

お皿を持って追いかけようものなら、脱兎のごとく逃げる


常に何か見えない恐怖に追われているような感じに見えた。

一体なぜ　　見えない恐怖の正体は何










もしかしてどこか具合が悪いのかもしれない。

何かとても怖い目に遭ったのかもしれない。

以前は食欲旺盛で私達にいっぱい甘えていたのに、

まるで別の猫になってしまったかのような小春


口が痛いのか、それとも・・・

ついに小春は常に逃げ腰になってしまった。

出てきてもすぐに踵を返して走り去ったり、

食べ始めてもすぐにやめてしまったり、

常に私達をにらみつけるような怖い顏をしていた。



「今日も食べられなかった。」「今日はなんとか一口食べた。」

「今日は来なかった。」　　

仲間との連絡はこんな内容ばかり続いた







　食べずに立ち去ろうとする小春に頭をぶつけるダリオ。
それはまるで、「小春ちゃん、行っちゃだめだよ、食べなくちゃだめだよ！」
と言っているように見えた。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
一週間以上まともに食事を摂っていない日々が続き、

小春は目に見えて痩せて行った

何とかしなければ。

来なくなってからでは遅すぎる、動くなら今だ

もう迷っている時間はなかった。



とにかく病院に連れて行こう、その後のことはそれから考えよう。

しかしこの時の状況では、とても小春を捕まえられないのでは・・・

と私は思った。







9月9日の朝、私達鬼ババ'Sは、小春が来ることを祈りつつ

通院の準備をして集まった。

今日が最後のチャンスかもしれない、失敗は許されない、

そう思うと緊張した。

幸い小春は姿を見せたが、私たちの顔を見て食べずに逃げた。

もう終わりなのか、私たちはこんなにもかわいがってきた小春を

失ってしまうのか。



しかし決して諦めない鬼ババA、茂みに逃げ込んだ小春を

後ろから忍び寄って見事に捕まえた

良かった　まずは最初の一歩を踏み出せた

思わず「すごいっ」と叫んだ。




おとなしく点滴を受ける小春。
体力は限界に近づいていた。



そのまま病院に直行、血液検査をしてもらった

結果は意外なものだった。

腎臓、肝臓、白血球などの主な項目は、

すべて許容範囲内にきれいにおさまっていた

エイズ・白血病はもちろん陰性

10年以上外で暮らしてきた子とは思えない数値だったが、

このことは後々私達の大きな安心材料となった。

体重は8月の2.68キロから2.3キロに減少していた

衰弱もひどく脱水も進んでいた。



口の中は腫れてひどい状態だった。これでは痛いだろう

とりあえずこの日出来るだけの無理のない範囲の治療をお願いした。





相棒・鬼ババAは、小春を家に保護すると言ってくれた

どんなに心強く思ったことか

相棒の家は、現在外猫を保護するのは少々難しい状況にもかかわらず、

とにかく今の状態を脱する間だけでも保護してもらえるのは

とてもありがたかった








こうして小春は、とりあえず鬼ババ家の猫となった。

9月9日、ちょうどスーパームーンの夜だった

スーパームーンと窓辺の小春。

こんな自信に満ちた表情を今まで見たことがあっただろうか。

一体その自信とは何だろうか。




このままうまく行って小春が家猫になれたらどんなにいいだろう

誰もがそう思った。

しかし、そう甘くはなかった

第二の難関はすぐそこまで来ていた。



続く