犬好きの国民
地中海にあるマルタ島は猫の楽園と呼ばれているらしい。野良猫を含め、島の至る所に猫がおり、あちこちに住人の撒いたキャットフードが置いてある。猫たちは島民たちに愛されながら、誰はばかることなく優雅に幸せに暮らしているということである。
ああ、そんな島、行ってみたい。
このサイトをひと目見たらわかってもらえると思うが、私は大の猫好きである。何年も飼っている飼い猫に、いまだに1日10回は「かわいい〜」を連発している。あくびを見ては「かわいい〜」、足の裏のピンクの肉球を見ては「かわいい〜」、肛門を見ても「おしり、かわいい〜」。全く見飽きない。男女関係もこうありたいものだ。
韓国は地中海の島とは対称的に、猫嫌いで犬好きの国である。サプサル犬とか珍島犬とか、韓国独特の犬種がやたら大切にされており、珍島犬に至っては他の犬の血が混ざらないように、入島時に検問まであるということだ。
ペットショップで売っているのは犬だけだ。ガラスに書かれた宣伝文句も「子犬、うさぎetc.」で、猫はない。、ペットフードは犬用が大半で、いくら隅々まで探してもキャットフードはなかった。マルタ島のペットショップは8割方キャットフードらしいのに……。韓国では猫はペットと見なされていないということだろうか。少なくとも、全く愛されていないことは確かだ。
野良猫のいない国
まず、私の滞在中、野良猫を見たことが一度もなかった。一方、犬はそこいら中うろうろしている。うろうろしているというのは、ヒモに繋がれていないということである。犬は「放し飼い」なのだ!日本では考えられない。日本で犬を放し飼いにすれば通報されてしまうだろう。
聞いた話では、猫はヒモに繋がれて飼われている(もし飼っている家庭があるならば)ということだ。逆だろう、それ。
犬を放し飼いにした結果、何が起こるかというと、勝手な交配である。うろうろしている犬たちは、まるで妖怪みたいなのばっかりだ。
大おば様の家のはす向かいに雑貨店があり、店先から犬がちょこちょこ顔を出した。その辺をのらのら散歩しては、また雑貨店の中に戻っていった。のんきなものである。
この犬、大きさは柴犬程度だが顔はチワワそっくり。体つきは子ブタそっくりだった。見たところ、チワワとダックスフントとその他もろもろの交配の結果と思われる。雑種は雑種なのだが、妙に純血種も混ざっているのがおかしい。
散歩しているとき、一度だけゴールデンレトリバーを見かけたのだが、これはさすがにきちんとナワに繋がれて、飼い主のそばを利口そうに歩いていた。やはり大型犬になるとそんなもんかなあと思ったが、いま思えば、あれは日本人の飼い犬だったのかもしれない。
韓国にいると猫という動物がいるということさえ忘れてしまう。まるで猫の存在などないかのようだ。
しかしこれは韓国人の国民性を考えると実にわかりやすい。上下関係を重んずる儒教精神には犬はまさにピッタリで、猫は恥知らずそのものだ。どこまでも序列に忠実な犬の生き方こそが美しいとされるのだろう。しかし猫好きの私にはこれは「幼稚な国民性」とも写った。
言っておくが私は犬も大好きで、散歩している犬を見かけるとついデレデレと引き寄せられてしまう。犬のほうも犬好きの人間はすぐ察知するので愛想良くしてくれる。鴨川で水遊びしている犬を、橋の上からえんえん眺めている変なやつだ。だけど飼うとなると、あのじっとこちらを頼りきって見上げる目が負担になってしまうような気がする。その点猫は勝手にやっててくれるから気持ちが楽なのだ。こんな私は韓国には全く向かないと思う。
でも、いくら犬好きだからって、犬鍋にして食わなくてもいいと思うけどね。
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