4年前のみぞれの朝、ボクは急な登坂を登っていく人を見つけ、びしょびしょになりながら、必死について行き、その人は自動ドアを開けて建物の中に入って行った。
誰かがまたドアを開けて入って行った時、ボクも一緒に中に入った。
今から仕事しようとする人達が、次々入って来た。
皆ボクを見て、色んなリアクションがあった。
『かわいい』
『何でこんなとこに犬いるの?』
それに…『猫か』という人もいた……
今思えば…ボクを猫と間違えたのは…どうやら、ねーさんらしい…(--;)
そこは、老人施設だった。
ボクは、とりあえず事務所に置いてもらえるらしくて、二つある入り口に柵がたて掛けられた。
ボクが逃げないように…だろう。
それに、ボクは『パピ』と呼ばれる事になった。
パピヨンだから、パピ…だそうだ。
事務所では、意外な来犬?に困り、すぐに緊急会議となり、警察に届けられ、迷い犬として地域の新聞にのせられた。
ボクも、早急に対応してもらってすぐに家に帰れると思って安心した…が、夕方まで待っても迎えが来ない。
ボクはこれからどうしたらいいんだ…(--;)
飼い主が現れるまで、ボクを預かってくれる人がいないか、また会議が始まった。
会議をしているそばを、『お先に失礼します』と言いながら、ボクと目が合った人がいた。
『誰もいないなら、あたしが見てもいいですよ』と言ってくれた人がいた。
『最近、一軒家買って、一人暮らしで怖いから、ちょうど、番犬が欲しいと思ってたので。帰りにホームセンターで犬小屋買わないと駄目ですね』と、ききづてならない言葉が……。
もしかして、番犬って…
外につながれる……??
ボクは一応、パピヨンで…
家の中でしか暮らしたことがないんだけども…
ボクがどんな犬か、この人は知らないんだ…。
…誰かが、『もしかして、外に置く気? 中で飼うわんちゃんなんだよ〜〜!』って、助けの神が言ってくれた!
なにを隠そう……ボクを外で番犬にしようとしていたのは……
ねーさんでした┐('〜`;)┌
ねーさんは、家の中でわんちゃんを飼うのは初めてらしい。
まずは、実家に連れていかれた。
実家には、すでに3匹の番犬がおり、ボクは一斉に怖い声で吠えられた。
怖くて『はじめまして』の挨拶も出来なかった。
初めて会ったジジとババは、まともにボクを見ずに、
『また、かわいそうだと思って拾ってきたなぁ……。これで何匹目よ…』
……と、いいながらボクを見ると、
『あららら〜〜〜なーんとちっちゃいわんちゃんだこと〜!』と、
驚いて代わる代わるボクをダッコしてくれた。
半年間、いつ迎えが来るのかと、待っていたが、迎えは来なかった。
ねーさんは、去年、中古の一軒家を手放し、アパート暮らし。
ボクはねーさんの実家で暮らす事になった。
…今日みたいな、みぞれの寒い日は、ふと…
4年前のあの日を思い出すボクでした。