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キャットアベニュー : ブログ

Blue Catを探して


モモタロウ
メーテル・リンクの「青い鳥」。チルチルとミチルが捜し求める幸せの青い鳥。幸せはありふれた日常の小さな夢や希望の中にある、そんなお話だった。一緒に暮らす猫たちは、喜びや悲しみを共有する。まさにしあわせの「青い猫」だと思う。猫たちに感謝をこめて、しあわせを運んでくる「Blue Catを探す」小さな旅に出かけたい。

開高道子さんとペルシャ猫

[04/23 13:01]





▲風そよぐ松林に囲まれた記念館正面入り口


▲開高健さん命名の、邸内中庭に通ずる「哲学者の小径」。
 「悠々として 急げ」とある


▲万年床の書斎


▲「遠い道を 
  ゆっくりと 
  けれど休まずに 
  歩いていく人がある」
        開高 健


▲記念館前の海岸への路は、サザンの曲でも知られる「ラチエン通り」


▲ラチエン通りから海を見ると、真正面に「えぼし岩」が見える

 東海道線の茅ヶ崎駅から海岸へ30分ほど歩くと、松林のむこうに開高健記念館がある。開高健さん、奥様の牧 羊子さん、お嬢さんの開高道子さんのかっての住まいで、いまは三人の生前の執筆活動を偲ぶ場所となっている。
 いまから約30年ほど前、毎月、この道を歩いた。
 当時、ある雑誌に執筆をお願いしていた道子さんのエッセー原稿の依頼と受取のためだ。開高健さんは、道子さんが幼稚園のころ、砂場にひとり遊ぶ姿を見て、この子は社会的に触れ合っていけるのだろうか、と心配されたというが、どうして、父親似の笑顔で社交的。時折、お茶会へ誘ってくださり、またあるときは手料理とワインで美味いもの談義。ご両親も飛び入り参加されていた。
 陽射しが心地よいそのリビングには、いつも一枚の絵のように白いペルシャが寝そべっていた。ある春の午後、おじゃましていると、いつものペルシャの姿が見えない。
 道子さんが、ぽつりと言った。
「亡くなったのよ」
牧さんが、
「でも、もうすぐ帰ってくるから」
と、慰める。

 道子さんは、その月のエッセーで、
「いぜん、ペルシャ種の猫がいました。うちの家族はネコキチぞろい。でも血統書つきを飼ったのははじめてで、ネコのお産に立ち会ったのも、このペルシャがはじめての体験だったのです。彼女は、仔ネコを四匹うんだのですが、彼らが大きくなり、自分の身のたけより成長しだすと、仔ネコのとき、抱きかかえてはなさなかったほどの愛情とは打って変わったキビシサで、彼らをつきはなしました。」(中略)
「動物の生存は飼いネコであっても、みていてきびしい、と教えられることがあるのね。犬畜生という言葉があるけれど、ある意味では動物の愛情の方が深く、そしてその愛ゆえに、耐える強さはときに人間以上であると思われることがしばしば。」(中略)
「甘えることはほんの少しで、多くの時間、孤独に生きるってことかな。」
と、ネコの親子の関係の激しさについてふれている。 それは道子さんの親子論ではと思えるのは考えすぎだろうか。

「もうすぐ帰ってくる・・・・・・」
 その帰り道、開高健さんの万年床の書斎に、ピラルクーやイトウがいくつも並べられていたことを思い出していた。

 ・・・・・久しぶりにいまは作品展示室となったリビングに憩う。
 あのときと同じように陽射しがやわらかい。





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