あの子は、どうして泣いているんですか?
今日があの子と、足元にいるワンコとの別れの日だからです。
あの子は、迷子になっていたあのワンコを、保護した女の子です。
それから一週間、あの子があのワンコの面倒を見てきました。
今日、あのワンコは、引き取りを申し出た新しい家族の一員として、旅立つのです。
そして、今日、あの子は、あのワンコと別れなければなりません。
それが悲しくて、切なくて、あの子は涙をこらえることができないでいるのです。
女の子の家には、すでに4匹のワンコがいるそうです。
心優しい、女の子のおばあちゃんが教えてくれました。
とても、もう一頭増やせる状況じゃありません。
彼女は、知っていたはずです。
うちでは、飼えないのだと。
それでも、彼女は、いっしょうけんめい、ワンコの世話をしました。
いずれ、別れが来るのだと、わかっていながら。
その事実を知った瞬間に、自分はシャッターを切りました。
彼女の切ない気持が、カメラを通して流れ込みます。
ファインダーが曇りました。
自分も涙をこらえることができなかったからです。
「泣かないで。この子は、幸せになるんだから。喜んであげて」
スタッフの言葉に、彼女は懸命にうなづいています。
そうなんです。
嬉しいはずなのに・・・・
喜んであげなきゃいけないのに・・・・
涙は、とめどなくあふれ出てしまいます。
ワンコも、今日がどんな日なのか、わかっているようでした。
うつむき加減で、彼女の抱擁から離れようとしません。
ワンコは、絶対に忘れないでしょう。
彼女に救われ、深い愛情をもって、世話をしてもらった数か月を。
彼女は、絶対に忘れないでしょう。
彼女の愛に、全身で喜びを表したワンコのことを。
ほんの一週間でしたが、命の大切さを実感した日々のことを。
心優しい人がいました。
寂しさと喜びが同居している瞬間に出会うことができました。
大人の汚れた魂が、純粋な愛情に、鋭く削られていきました。
そして、一瞬、真白な自分を見ることができたような気がしました。
2008年9月14日 23:44 公開 シーバス
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なぜ?